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FICTION DIARY - 『僕と君と明日のつづき』(19)

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僕と君と明日のつづき
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 当ブログは基本的にフィクションです。実在の人物、団体、事件など一切関係ありません。掲載された文章には校正が入っておりません。誤字脱字などのご指摘、その他、ご感想やリクエストなどありましたら、メールにてお送り下さい。
2008.07.13 Sun
FICTION DIARY - 『僕と君と明日のつづき』
目には見えない魔法
text by HOSOKAWA matasaburo | 文=細川又三良
 本にも大きな変化が訪れている、の話の続き。

 まずは、ブックオフなどの大型古書販売の台頭が挙げられるだろう。
 それは今までに再販制度で守られていたはずの本の価格という共通認識を根底から破壊してしまったように思える。
 そう、出版界にとって、一番のダメージは文庫が売れないとか万引きが増えたことよりも、読者側の常識の変化ではないだろうか。

 1500円ぐらいで買って、自分が大切に持っていた本が、そんなに古びてもない状態でたった100円で叩き売られているのを目の当たりにする衝撃。
 今までは、本は所有して何度も読むものだったものが、日本の狭い住宅事情もあって、もはや本はストックではなくフロー、つまり流通するものになってしまったのだ。
 古本を買って読んで、また売り払ってしまえばいい。
 新刊でも、一年ぐらい待てば、文庫に出るよりも早くブックオフの100円コーナーに並べられる時代、多くの人が普通の書店で単行本を買うのを躊躇うようになったのではないだろうか。

 その他にも、週刊誌や情報誌など、雑誌も相当ヤバイのではないだろうか。
 雑誌の特徴は速報性にあるが、その点ではどう逆立ちしてもネットには勝てない。
 ネットでは小説のように長文を読む必要もないし、いち早く豊富な情報にたどり着けることから、この先、どうやって雑誌が生き抜いていくのか、興味深く見守ることになるだろう。
 唯一、ネットに勝っているのは、取材や記事を書く能力だから、きっと、そこがキーポイントになるに違いない。

 行き着くところ、最後は苦しい業界だよなあ、と思わざるを得ない。
 それでもきちんと生き抜いている作家がいる。そこで何よりも僕が評価の基準としているのは、ブックオフの100円陳列棚だ。
 ちゃんと棚に作家名があるけれど、そこに並ぶ本が少ないほど、本当の意味で読者に支持されていることになる。
 棚に溢れやすいものは流行りを追ったり時事ネタを扱ったもので、逆に、棚に並ばないものは、きっと、行間に目には見えない魔法が綴られているのだろう。

 こういうことを考えると、いつも、ある彼女のことを思い出す。

 シホミさんはものすごい才能の持ち主だった。
 彼女の小説を読んだだけで、ああ、この人はプロになるんだ、いや、プロになって欲しい、と羨望や嫉妬を越えて応援したくなるほど、僕は彼女のすべてが好きだった。

 しかし、彼女はある日、突然、筆を止めた。
 書けなくなったのか、書かなくなったのかはわからない。
 
 そして、その夜、初めてシホミさんは僕に身体を許した。
 そこには何の意味も無いはずなのに、僕は今でも特別な感情を抱えたまま、生きている。

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(2008/07/13(日) 23:54)

 

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